signatures

 

不動産を売ったり買ったりする時には、契約書を’はじめ、たくさんの書類に署名をしなければなりません。アメリカでは印鑑は使わないので、「この書類に同意します」「この書類を確かに読みました」という証明は署名(サイン)で行うことになります。不動産取引では、署名をした書類そのもの(Wet Signatureと呼ばれます)のコピー、スキャン、ファックスなどを現物同様に扱うのが普通です。署名をした書類をスキャンしてEメールで渡すのが最も一般的で、オリジナルを郵送する必要も保管する必要も通常はありません。

取り引きに使う書類には、売り手と買い手の両方の書名欄があるのもが多くなっています。この場合は、片方が署名した書類のコピーにもう片方が署名し、両者が署名した書類のコピーを双方で保管するのが普通です。ただ片方が署名をするのを待っている時間がない場合などは、署名が必要な書類を2部コピーし、一部には売り手が、もう一部には買い手が署名する方法がとられることもあります。このように”カウンターパーツ”で署名しても、一枚の紙に両者が署名しているのと同様と見なされます。Please click the following link to read the rest of the article. 

最近は「電子署名」も手書きの署名と同様に扱われるようになっています。Docusign、Digital Inkなどの電子署名サイトを使えば、メールアドレスに署名が必要な書類を送り、画面上で署名することが出来ます。これだとプリンターもスキャナーも要らないので大変便利です。私のお客様にも、ほとんど全ての書類を電子署名サイトを使って署名していただいています。ただ銀行によっては電子署名を不動産取り引きに使用しないところもあり、抵当流れ物件やショートセール物件の取り引きは従来どおり手書きの署名が必要なこともあります。

上記の例外はエスクローに提出する書類です。不動産エージェントがお客様に署名していただく書類は、契約書からはじまり、修理箇所の交渉、コンティンジェンシーを外すなど、大雑把にいうと”合意形成”のために使用されます。これに対して、全ての手続きが公正に正しく行われているかどうかを見極める「審判」の役割を持つエスクローからの書類は、”決まったことを確認する”書類と言えます。例えばカリフォルニア不動産協会のスタンダードな書類を使って双方が値引きに合意した場合、エスクローからくる同じ内容に書類にも署名しなければなりません。合意形成に加えて、確認の書類が必要だからです。確認・最終決定の機能があるエスクロー書類への署名はよりきびしく信憑性が問われるため、電子署名は使えない場合が今のところは多くなっています。署名した書類をスキャンしてEメールすればいい場合が大半ですが、エスクロー会社によってはオリジナルの現物(Wet Signature)を送って欲しいと言われることもあります。

さらに不動産を売り渡すことに同意するDEEDへの署名は、最も厳しく信憑性が問われるため、公証(Notary)が必要になります。アメリカ国内でこれを行うのは簡単で、街中のコピーセンターなどでNotary Publicをやっているところを探し、書類と身分証明書を持っていき、$10-15ほど払ってNotaryの資格のある人の目の前で署名すればおわりです。不動産の名義が夫婦片方のものになっている場合、もう片方の人がQuite Claim Deedに署名しなければならないこともあります。不動産を購入する場合も、夫婦片方だけの名義にする時は、もう片方の人がQuit Claim Deedに署名しなければなりません。

ただしアメリカ国外だと話が違ってきます。公証できるところは国外では通常アメリカ大使館のみになり、地方にいる場合などは大使館のある都会まで行かないと公証ができません。しかも日本のアメリカ大使館の公証は非常に混んでいて、予約が1ヶ月ほどとれないことも。(日本は公証についての協定を結んでいるので、本来は日本の公証がアメリカで通用するはずなのですが、登記事務所に前例がないと問題になる可能性が否定できません。そのため、通常は大使館で公証してもらうことをお勧めしています。)本人及び夫婦の片方が海外在住だったり、海外出張が多い場合は、誰がDeedに署名しなければならないのかを出来るだけ早く調べ、計画を立てておく必要があります。

このようにみていくと、不動産取引の署名については、本人がアメリカ国内にいなくても十分対応できることが分かっていただけると思います。Eメールさえ使えれば、本人が全世界のどこにいても、ロサンゼルス市内にいるのと同じスピードで手続きをすすめることができます。公証は国外だと面倒になりますが、これもあらかじめ予定を立てておけば大使館とフェデックスを利用して対応できます。