住宅ローンを組む時、ローン会社が購入価格が適切であるかどうかを調べるのがアプレーザル(appraisal 価格査定)です。

当事者同士が『この家は一億円!』などと合意して売買契約を成立させても、その家の価値がそれだけあるとは限りません。もしも客観的な価値が5千万円しかなかったら、8千万円を貸し付けたローン会社は万が一の場合にその家を売って資金を回収することができません。このような事態を避けるために価格査定が行われるのです。

価格査定は売買契約成立後、できるだけ早く行います。売買契約には「査定額が契約額未満だったら契約をキャンセルしてよい」という特約事項が盛り込まれているのが普通で、その期間が14-17日ぐらいしかないからです。査定の費用はバイヤーが負担します。概ね$450~600ぐらいです。売買契約が成立するとすぐにローン担当者から電話がかかってきて、料金をクレジットカードで支払って欲しいと言われます。i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i 

価格査定を発注する前には、収入などの情報を提出し、ローンの事前審査を済ませておく必要があります。費用を支払った後で「やっぱり別の条件でローンは許可できません」などと言われたら、たまったものではありませんから。また査定の発注と同時に、ローンの正式な申込書にサインして提出します。

査定を発注するのは住宅ローン会社ですが、アプレーザー(実際に家に来て査定する専門家)を選ぶのはローン会社とは別のマネージメント会社です。ローン会社の関係者がアプレーザーと直接連絡することは、最近できた法律で固く禁じられています。その理由はローン会社は家を高く査定してくれるアプレーザーを選びがちだからです。

査定額が契約額よりも低く契約がキャンセルされてしまうとローン会社の商売はあがったりです。もしもローン会社がアプレーザーを選んだり、アプレーザーに連絡してプレッシャーをかけることができると、査定額がローン会社の都合がいいように操作されてしまう可能性があります。前回の住宅バブルの反省も踏まえ、そんなことが起きないようにこのような法律ができたわけです。

査定を発注してから数日するとアプレーザーから不動産エージェントに電話がかかってきて、家を見せる日が決まります。バイヤーやセラーはアプレーザーに会うことはありません。実際にアプレーザーが現地を見る時間はほんの15分ほどで、そのほとんどは家の大きさを測る作業に費やされます。優秀なエージェントは、この機に失礼にならないようによくよく注意しながら、近隣環境や建物の良い点、個人売買などでデーターベースに出ていない最近高く売れた物件情報(もしあれば)、学校区の境界線、訳ありで安くしか売れなかった物件があればその理由などを、できるだけさり気なくアプレーザーにインプットします。また家を売る場合は、アプレーザーが来る前に、煙探知機や一酸化炭素報知器をきちんと設置しておく必要があります。

価格の査定は過去90日内に売れた似たような物件(Comparable)5件をベースに、対象物件との違いを金額で調整しながら行われます。家が掃除されているかどうか、家具の配置が良いかどうかなどは査定額には通常影響しません。価格の調整は細かい決まりに従って行われるので、見た目の印象などは入り込む余地がないのです。ただし「90日内に売れた似たような大きさとコンディションの物件」などほとんどないこともたくさんあります。(コンドミニアムや計画的な開発地は別ですが。)その場合はアプレーザーの個人的裁量が査定価格を左右することになります。

住宅ローンを組むための価格査定では、査定額は契約額を上回ることは通常ありません。8千万円が契約額だとすると、8千万円かそれ以下が査定額になります。ローン会社にとっては査定額が契約額以上であればいくらでも構わないので、契約額8千万円の家に9千万円の価値があるかどうかには関心がありません。また契約額よりも高い額を出して、バイヤーとセラーの間に揉め事を起こしてはいけないという配慮もあると思います。

査定額が契約額を下回ってしまったらどうしたらいいのでしょうか?不動産価格が上昇している時は、このような事態がかなり頻繁に起こります。査定は過去の販売額をベースに行われているので、現在の価格(=契約額)はそれよりも高くなりがちだからです。このような場合は、まずセラーに価格交渉をします。ただし最近はあらかじめ「アプレーザルによる価格交渉に応じない、アプレーザル価格が低くても契約はキャンセルできない」というう契約条項をセラーが盛り込むことも多くなっていますので、査定額が低くても、購入額を必ず引き下げられるわけではありません。

査定額よりも高い額で物件を購入するには、住宅ローンは査定額をベースに組み、それを超える部分はバイヤーがキャッシュで補う必要があります。例えば査定額が$800,000で購入額が$850,000、頭金が2割の場合は以下のようになります。

住宅ローン額 $800,000X0.8=$640,000
現金支払い額 $850,000-$640,000=$210,000

セラーがオファーを検討する際も、万が一の場合、バイヤーにキャッシュがあって査定額と購入額の差額をカバーできるかどうかが、大きな関心事になっています。

長くなりましたが、アプレーザルについてだいたいわかっていただけましたでしょうか? 何かご質問がありましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。