アメリカで不動産投資をしている人と話していると、必ずと言っていいほど話題に上るのは1031 Exchange(テンサーティワン・エクスチェンジ)。ここではこの1031 Exchangeとは何かを簡単に説明してみたいと思います。
自宅用ではなく、投資用として不動産を持っている場合、その不動産を売ると利益に対して課税されます。例えば20万ドルで購入した賃貸住宅を30万ドルで売った場合は、10万ドル(30万ドル−20万ドル)が利益となり、それに対してキャピタルゲイン課税されます。(利益を確定するには実際はもっと細かい計算が必要ですが、ここでは省きます。)キャピタルゲイン税率は収入その他の条件で変わりますが、一般的に言って10%~40%の間です。“利益の三分の一ぐらいは課税される”と覚悟しておいた方がいいと思ます。i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i
ところが、1031Exchange(正確には1031 Tax Deferred Exchanges)を使うと、投資物件を売ってっもすぐにはこのキャピタルゲイン税がかかりません。どうやるかというと、元の物件(original property)を売ったあと、次の物件(replacement property)をすぐに購入するのです。こうすると不動産物件を“売った”のではなく“交換”したことになります。なんかものすごくこじつけっぽいですが、これだと「売ってないので利益は出ていない」と言えるわけです。
ただしこのキャピタルゲイン税は永久に免除されるのではありません。将来交換先の物件を売るときは、売ったもとの物件の購入価格との差額に課税されます。(実際はもっと細かい計算が必要です。)売った元の物件が新規に購入した新しい物件に「成り代わっている」わけですので、大元の購入価格から増えた分は利益とみなされるわけです。1031Exchangeを行うとキャピタルゲイン課税を先送り(Deferred)できるわけです。
この先送りは投資家にとって通常はとても有利です。物件を売ったときに税金を払ってしまったら、購入資金が減ってしまいます。税金を先延ばしすれば、購入資金が増え、その分大きな不動産を買うことができ、そこからあがる利益も通常は大きくなります。不動産は重要な投資アイテムですので、常に資産の一部を不動産にしておくのがよい、と考える投資家もたくさんいます。そのような人が不動産を売らずに交換だけしている場合は、ずっとキャピタルゲイン税は払わないで済むことになります。
ただし、このエクスチェンジはあくまで買った時よりも大きく値上がりした不動産に対してのみ役立ちます。あまり値上がりしていなかった場合は、エクスチェンジの費用の方が大きくなってしまうので意味がありません。
以下、1031 Exchangeについて知っておきべきことを書いてみます。
- 投資物件のみに利用可能。自宅用には使えません。
- 1031 Exchangeを行うには大元のオリジナル物件がエスクローに入っている間に特別なエクスチェンジ専門会社(1031 Exchange Accommodator、 1031 Exchange Facilitatorと呼ばれます)に依頼して交換の作業を始めてもらう必要があります。エクスチェンジを行うということが販売契約に含まれなければならないので、元の物件を買ってもらうバイヤーの同意も必要になります。
- 元の物件のエスクローがクローズして物件が売れてしまったら、もうエスくチェンジはできません。
- 交換先の物件はアメリカ国内のどこにあっても構いませんが、似た物件(like kind)である必要があります。ただし似た物件の定義は非常に広く、不動産投資物件同志の交換であれば、ほとんどが大丈夫です。コンドミニアムを売ったら、コンドミニアムを買わなければいけないなどということはありません。
- 交換する先の物件の価格はオリジナルの物件の価格-販売経費を超えるものである必要があります。元の物件よりも高い分にはいくら高くても構いません。元よりも安い物に交換してしまうと、その差額に課税されます。
- 交換先の物件は何軒でも構いません。ただし、その価格の合計が元の物件の価格-販売経費を超えている必要があります。
- 先に交換先の物件を買ってしまっておき、それから元の物件を売っても構いません。(Delayed Exchange)また2軒に交換する場合は、先に交換先物件の一軒を買い、次に元の物件を売り、その後にもう一軒を買うこともできます。(Hybrid Exchange)
- これが一番大切なのですが、元の物件のエスクローがクローズしてから45日以内に交換先の物件を指定しなければなりません! その後、交換先の物件は135日以内(合計で180日)以内に購入しなければなりません。ロサンゼルス周辺の場合は実際問題としては、元の物件が売れてから45日以内に次の物件のエスクローに入る必要があります。エスクロー期間は通常40日程度なので、180日以内に購入する方は問題ないと思います。
- 購入先の物件は実は候補を3軒指定できます。ただしロサンゼルス周辺の場合、不動産はどんどん売れてしまうので、初めの一軒がうまくいかなかったからといって、次候補の物件がまだ売れずに残っている可能性は非常に低くなります。“スペアを確保する”という意味でこのルールがあるのだと思いますが、現実にはあまり役立ちません。(条件によっては3軒以上指定できるルールもあります。)それよりも45日以内に次の物件をエスクローに入れ、建物調査も終えておくのが大切だと思います。
上記はあくまで2017年時点での1031Exchangeの概要をかいつまんでご説明するものです。条件は個々の事情で変わる可能性があります。実際に1031 Exchangeを行う場合には、事前に会計士にルールの説明や節税効果について詳しく相談してください。