今日は家を売るときの注意点、セラーが陥りやすい落とし穴シリーズの第一回として、「バイヤーからの手紙」について書きたいと思います。

南カリフォルニアでは今売り物件が非常に少なく、住宅価格が昨年同時期よりも15%も上昇し、さらに年内にその上6%も上昇すると言われています。学校区の良い地区の戸建て住宅売り物件の争奪戦は熾烈を極め、一つの物件に数日で10件ものオファーが提出されることも珍しくありません。このような競争を勝ち抜くために、最も重要なのは高価格を提示することですが、他にもあの手この手でバイヤーは自分のオファーを魅力的にしようとしてきます。

そのツールの一つが「バイヤーレター」。i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i ii i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i 

これはバイヤーがオファーに添付するセラー宛ての手紙で、簡単な自己紹介と、自分はきちんとした仕事をしていて住宅ローンを組むのに何の問題もないこと、この家をものすごく気に入っている理由などが書かれています。「バイヤーラブレター」などと揶揄されることもあるほどで、バイヤーは何とかセラーに気に入ってもらおうとして、家の素晴らしい点を羅列。「家をきれいにキープしていて驚いた」、「なんて素晴らしい壁の色のセンスだろう」、「お庭の花の手入れに心がこもっているのを実感」など、オーナーを褒めるフレーズもよく見かけます。締めくくりとしては「この家を購入させて頂いたら、一生感謝します」と、大げさに書かれているものもよくあります。かわいい子供や犬が写っている家族写真が添付されていることも多く、聞いた話では上記内容をカメラに語りかけるビデオを送ったバイヤーもいたのだとか。

数字が並ぶオファー(契約書案)を読むよりは、レターを読む方がずっと楽しいのは事実で、長年住んだ家がどんな人に渡るのか、知りたいと思うのは人情でしょう。いくら素晴らしい手紙をもらっても、最高額を提示したバイヤーと契約するのが普通ですが、金額が似ている場合は手紙の内容でセラーの判断が左右されることもあります。

このバイヤーレターが、今実は業界内で大きな問題になっています。というのは、このレターを読むことによってバイヤーの人種、家族の有無、LGBTQであるかどうか、宗教などが分かってしまうケースが多いからです。自分の家ですからもちろん誰に売ってもいいのですが、その際は、人種、宗教、性別、性志向などで買う人を差別することだけは許されません。(実はカリフォルニアでの不動産取引上差別してはいけない項目 -Protected class-は22項目もあります。それについてはまた回を改めて書きたいと思います。)例えば独身女性からのオファーが最高価格だった時、それを選ばずに価格が低くても頭金が多いオファーを選んだとします。そのオファーがたまたま日本人夫婦からのオファーだった等の場合、このような手紙をもらっていると「女性だから(あるいは独身だから、日本人でないから)オファーが採用されなかった。」などというクレームが発生してしまう可能性があるのです。

エスクロー期間中にバイヤーと価格交渉になることも多く、バイヤーのバックグラウンドを知っておくことは有効です。手紙を読むことで「この人は家をとても気に入っているから、修理に応じなくてもキャンセルはしないだろう」などの予想がある程度つくこともあります。手紙は重要な判断材料になりうるのですが、上記のような差別のクレームが出る可能性があるのも事実です。

差別問題のクレームが出るのは絶対に困ると思う場合は、初めにバイヤーからの手紙は受けとらない旨を周知しておけばいいと思ます。あるいはProtected Classに関する内容は書かないでくださいとお願いする方法もあります(書く方は難しくて苦労すると思いますが。)手紙を受け取ることにする場合は、オファーを選んだ方針を説明できるようにしておく(最高価格を選ぶなど)必要があると思います