MLSとはMultiple Listing Serviceの略。全米の不動産物件データベースのこと。各ブローカーは、物件の持ち主と販売契約をすると、すぐに地元の不動産協会に契約内容や物件情報をアップロード。それがほぼ瞬時に全米レベルのリアルター協会であるNAR(National Association of Realtors)が管轄するデータベースMLSに反映される。
協会に所属しないと他の売り物件情報が見られない、つまり商売にならないので、ブローカーは非常に稀な例を除いて全員各地のブローカー協会に所属している。そのため、物件のオーナーがMLS掲載を拒否するなどの場合を除き、全米の全てのブローカーが扱う物件がMLSに掲載される、つまりアメリカで売り出されている物件がほぼ全部このMLSに掲載されるシステムになっている。MLSには売り物件情報だけではなく、ブローカー同士の通信欄もあり、売買にとっての重要な情報はそこに書かれていることが多い。また現在の売り物件情報だけではなく、膨大な過去のデータを検索、分析することもできる。i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i
このMLSのために、不動産の売り手は、どのブローカーを使っても自分の物件が全米に宣伝されることが保証されている。また購入する側も、どのブローカーを使っても全ての物件情報にアクセスすることが可能になる。MLSは消費者にとっては非常に便利なシステムだが、持っている情報量が同じになるので、ブローカーにとってはお互いの競争を激化させる要因になっている。
Zillowなどの消費者用不動産情報サイトは各地のブローカー協会からMLS掲載データのうちの消費者向け情報部分を購入している。以前はMLSの方が情報が早かったが、最近は消費者向けサイトにもほぼ数分で反映されるので、時間差はほとんどないといっていい。このMLSのおかげで、現在は一般消費者と全国津々浦々のブローカーやリアルターが一瞬でほぼ同じ最新売り物件情報を手にしている状況になっている。
一昔前は、ブローカーはバイヤーに売り物件の情報を提供するのが主な役割だったが、それは現在では一般の人が自分でできてしまう。「あそこに素晴らしい物件があります。」などという情報はお客様がすでに知っている。そのためリアルターの現在の役目は、情報の分析、各物件のMLSに出ていない情報の収集、購入プロセス全般をいかにうまくアシストしていくかになっている。