複数のオファーが一つの物件にある場合、なんといっても一番問題になるのは購入価格です。ただし似たような金額のオファーがいくつかある場合、オファーを選ぶにあたってセラーが最も注目する事項の一つがコンティンジェンシー期間なのではないでしょうか。
コンティンジェンシー(contingency)とは言ってみればキャンセル可能条項。「○○が満たされなかったら、ペナルティ無しでキャンセルしていいですよ」と契約書に書かれている項目のことで、主なものはインスペクション(建物や権利関係、周辺状況などの調査)コンティンジェンシーとローンコンティンジェンシーです。それぞれのコンテンジェンシーには期間が設定されていて、その期間内ならばペナルティ無しでキャンセルできます。例えば「建物の基礎が壊れていることが分かった」場合はインスペクションコンティンジェンシー、「結局ローンが組めなかった」場合はローンコンティンジェンシーが使えます。
インスペクションコンティンジェンシー、およびローンコンティンジェンシーのスタンダードな期間は17日間。(セラーがオファーにサインしたらすぐに両方の期間が同時にスタートします。)ところが、売り物件が非常に少なく、オファーがたくさん一つの物件に集まる現状では、ローンはともかく、インスペクションコンティンジェンシー期間を17日もとっているオファーは珍しくなっています。
人気物件に対するオファーのインスペクションコンティンジェンシー期間は7日から長くても12日ぐらいが普通なのではないでしょうか。オファーを出す前にコントラクター同伴で物件を見ておいて、インスペクションコンティンジェンシー無し、あるいは期間2日などで出してくるバイヤーもいます。
セラーとしては万が一バイヤーがキャンセルしてきても、1週間か10日ぐらいなら他にオファーを出してきたバイヤーが待っていてくれる可能性が大。物件の売れ行きに対するダメージは最小ですみます。またコンティンジェンシーが短期間のバイヤーにはあれこれ細かいことをチェックしている余裕はありません。「この家がとても気に入りました。よっぽど大きな問題さえなければ、細かいことには目をつぶって買います!」と言っているもの同然なので、セラーは売りやすい相手と見なしてくれるのです。
コンティンジェンシー期間7日間の場合のインスペクションスケジュールは例えば以下のようになります。
1日目 エスクロー入り。デポジットチェック入金。建築許可書類の調査を発注。建物調査を発注。
3日目 建物一般調査、シロアリ調査、下水管(Sewer line)調査
4日目 調査報告書到着
4-6日目 修理が必要な部分についてコントラクターや専門家の再調査。見積もり収集。建築許可等調査報告到着。
6日目 修理費総額がだいたい判明。提示額で購入するかどうか判断。必要なら減額や修理を要求。
家の購入を最優先にして、ほぼ連日数時間以上時間がとれる方ならば、7日間でもかなりしっかりとした調査が出来ると思います。ただし、一般建物調査で指摘された問題について、それぞれの専門業者全部を期間内に呼んで来るのは至難の業ですので、いくつかの項目については修理費用がしっかりとは判明しない可能性がありますが、「買う、買わない」の判断をする程度の情報は、十分集まるのではないかと思います。
私がバイヤー側のエージェントの場合は、インスペクターや業者のご紹介と予約は全てお手伝いさせていただきます。