A house with a pool

カリフォルニア州で不動産を売買するためには膨大な書類のやり取りが必要です。その中で最も重要な書類はGrant Deed(グラント・ディード)です。

不動産におけるグラント・ディードとは、不動産の所有権を移転する法的文書のこと。

不動産の売買契約書(Purchase Agreement)は、「〇〇の条件がクリアされたら買い手はこの物件を〇月〇日に〇ドルで買います。売り手は〇〇(情報提供や修理など)をいたします。」という、ある条件下で権利の移転を”約束する”書類で、権利を移転する書類ではありません。事実、契約書に双方が署名をしても、どちらかが契約を破って権利が移転されないこともあるわけです。 i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i ii i i i i i i i i i ii i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i

これに対して、グラント・ディードは「この方にこの物件の権利を移転いたします!」と宣言している書類で、これがカウンティの登記所に登記されると、売買契約書があろうがなかろうが、お金がいくら払われていようがいるまいが、そこに書かれている人に不動産の権利が移ります。ということなので、グラント・ディードは不動産取引にとって最も重要な書類なのです。

ロサンゼルス郡の場合、グラント・ディードに書かれる主な内容は以下です。

  • APN番号 (その不動産のID番号)
  • 権利受け取る人(買い手)の名前
  • 権利を渡す人(売り手)の名前
  • ”所有権を移転致します”との宣言
  • 物件の位置や境界線情報
  • 権利移転手続きの手数料額

余談ですが、面白い(?)ことにここには売買額は書かれていません。

グラント・ディードは一般公開情報で、不動産関係者がアクセスできる不動産データベースにも情報が載っているのですが、そこには売買額がちゃんと書かれています。どうして売買額が分かるのか疑問でしたが、なんとそれは登記手数料が売買額によって決まることを利用して逆算しているのだそうです。ご苦労様なことです。

このような超大切なグラント・ディードに、不動産の売り手はいつ署名をするのでしょうか?「これに署名したら物件を手放すのと同じ。買い手からお金を全部もらって全て終わってから署名したい。」と思うかもしれませんが、実はそうはいきません。買い手は「購入額を振り込むのは、購入できることが確定してからだ。グラント・ディードが署名されるまでお金は渡したくない。」と思うかもしれないですし、エスクローに資金が揃ってから署名するのでは時間的に間に合わないからです。

カリフォルニアの場合、ここで登場するのがエスクロー会社。エスクローは双方が信頼する機関です。エスクロー会社は、まずは売り手からグランド・ディードに署名したものを通常はエスクロー期間が始まってすぐに預かります。次に買い手からのお金が揃ったところでグランド・ディードの登記を指示、利益を売り手の口座に振り込みます。このようにお金と物件の権利を確実に交換するのがエスクロー会社の最大の役目になっています。

登記が終わってしばらくすると、買い手に登記所からグランド・ディードに「確実に登記いたしました」という意味のスタンプが押されたものが送り返されてきます。これが日本における「権利書」にあたりますが、実はこの紙そのものには大きな重要性はありません。不動産業者用のデータベースにはスタンプ付きのグランド・ディードの画像がアップロードされていますので、必要ならいくらでもプリントアウトできます。紛失したり、郵送されてこなかったりしても特に問題ありませんし、次回の売買にも原本は必要ありませんのでご安心ください。

Photo by John Fornander on Unsplash