不動産購入契約の中によく出てくるのが「コンティンジェンシー(contingency)」という言葉。
辞書で引くと、偶然性、偶発性、不確実性 、不測の事態などという訳が出てきますが、不動産契約のcontingencyの説明には、あまりなっていません。不動産契約におけるコンティンジェンシーは「契約キャンセルできる条件」と考えていただけると一番いいと思います。
売り手と買い手がサインするカリフォルニア州のスタンダードな不動産売買契約書は、様々な「コンティンジェンシー=契約キャンセルできる条件」がたくさんついた条件付契約書です。それは「絶対に購入します!!」という確約では全然なく、「〇と〇と〇とがOKだったら購入します」という不確かな合意。実は「問題が全然なかったら購入・・・するかもねー。」ぐらいのものなのです。i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i
この「〇がOKだったら」の〇にあたるものがコンティンジェンシー。買い手はそれに満足できなかったら契約をキャンセルしてかまいません。ペナルティーも科せられません。
スタンダードな不動産売買契約書のコンティンジェンシーは大きなものが3つあります。中でも一番重要なのがInspection (調査)Contingency。当初の契約に売り手と買い手がサインをしたら、買い手は専門家(ホームインスペクター)を雇って調査を始めます。その結果はレポートにまとめられますが、もしもそこで何か重大な問題がみつかったら契約をキャンセルして構いません。他にも売り手から、権利関係を調査したレポート、周辺の自然災害の起こりやすさなどを記したレポート、売り手が物件について知っていることを書いた書類などが届けられますが、それらは全部Inspection contingencyでカバーされます。それらの書類を読み、自分でもリサーチをして、物件に何か重大な問題があることがわかったら、契約をキャンセルすることができます。
次に大切なのはAppraisal Contingency (アプレーザル・コンティンジェンシー)です。住宅ローンを組む際、ローン会社は担保となる住宅に貸し出すローンに見合う価値があるかどうかを価格査定(アプレーザル)を行って調査します。査定価格が購入額に届かなかった場合は、予定した方法でローンを組むことができません。このような事態になったときはアプレーザルコンティンジェンシーを使って契約をキャンセルすることができます。
重要なコンティンジェンシーの3つ目はLoan Contingency (ローン・コンティンジェンシー)です。エスクロー期間に入るとローン会社は詳細なローン審査を始めます。万が一この審査でローンを組むことができないと分かった場合は、契約をキャンセルすることができます。
買い手は、オファーを出すとき契約締結後何日間上記のコンティンジェンシーを行使することができるかを(コンティンジェンシー期間)、契約書に書き込んで提示します。例えばインスペクション・コンティンジェンシー期間が10日間の場合、調査はすべて10日以内に行い、キャンセルする場合10日までに売り手に伝えなくてはなりません。(実際はもう少し複雑です。)
数年前までは、インスペクション・コンティンジェンシー期間は14日間、アプレーザルとローン・コンティンジェンシー期間は17日間ぐらいが標準的でした。
ところが最近は売り物件が非常に少なく、一つの物件に多数の買い手が集まってしまう売り手市場になっているため、以前に比べて条件が買い手にとってより激しくなっています。最近ではインスペクション・コンティンジェンシー期間は3~7日、アプレーザル・コンティンジェンシーは無し、ローン・コンティンジェンシーは15日程度などが多くなり、人気物件ではインスペクション・コンティンジェンシー期間は無しか3日、ローン・アプレーザルコンティンジェンシーは無しなどの条件を提示しないと購入できないケースも増えています。