売り手も人間です。金勘定だけで買い手を決めるとは限りません。特に長くその家に住んでいた場合は、自分の大切な「我が家」に次に誰が住むのかは大変気になる事柄で、お金だけで割り切れないこともあります。
他人には単にくたびれた寝室に見えても、成人した子供が小さかったころ使っていた部屋や、亡くなった人がかつて暮らしていた部屋などは、売り手にとっては世界で一番大切な部屋なのかもしれません。いろいろな事情で売らなければならなくなっても「自分の思い出の詰まった家を出来ればそっくりそのままの状態で受け継いで住んでいってもらいたい」と心の底では思っている人がかなりいると思います。
というわけですので、人によっては金額や条件が他のオファーよりも多少悪くても「その家の良さを分かってくれる人」「その家をより必要としてくれる人」「自分がやったリモデルや修理を評価してくれる人」「すぐに大幅な改造をする予定のない人」のオファーを選ぶことが稀にあります。あるいはそういう人のオファーが来たら即決したり、金額的にはトップグループに入っていなくてもカウンターオファーでチャンスを与えたりする場合もあります。
このようなセラーの感情にアピールするため、たくさんのオファーが集まっている物件に対しては、「家のどこがどう気に入ったのか」と「自己紹介・家族の紹介」を書いた手紙をオファーに添付して提出するのは効果的だと思います。数年間しか住んでいなかったり、若いカップルだったり、投資家が賃貸しているような場合はあまり関係ないかもしれませんが、子供をそこで育てたセラーや、高齢のセラーには、時間があったら念のために添付したほうがいいのではないでしょうか。
オフィスの他のエージェントに聞いた話だと、家の気に入った点をバイヤーが述べたYou Tubeビデオを携帯電話で撮影、そのリンクをオファーに添えて提出したバイヤーもいたそうです。金額がさほど高くなかったにもかかわらず、カウンターオファーがもらえて、最終的な選考にまで残ったとか。結局は他のオファーに負けてしまったらしいですが・・・。
あまり多くの情報をセラーに与えてしまうと、好かれる可能性もありますが、逆に嫌われてしまうこともあり得ます。ですので、私は短い手紙だけ、あるいは、もしも小さなお子さんがいる方なら家族の写真(かわいい赤ちゃんや子供が嫌いな人はめったにいません!)添付程度が一番いいのではないかと思います。
自己紹介の部分では、「この人のローンは簡単に通るだろう」とセラーに思ってもらえるよう、堅くて安定した職業についていることを強調しましょう。手紙はやはりバイヤーの方が自分で書いた手紙が一番効果的だと思います。文章が達者でなくても、正直で心がこもった手紙がいいと思います。でも自分で書くのが面倒、英語が苦手、などの場合は、エージェントに代筆してもらったり、エージェントにバイヤーを紹介する手紙を書いてもらってはどうでしょうか。
余談ですが、物件を見に行った時にもしもオーナーがいたら、出来るだけにこやかに、丁寧に対応するようにしましょう。(オーナーは遠慮して引っ込んでいることが多いので、話をするチャンスはあまりないかもしれませんが。)自分が気に入った点を言うのはかまいませんが、家の欠点を言ったり、リモデルする予定を話したりするのは絶対に禁物です。「日本語で話していれば分からない」と思われるかもしれませんが、最近は日本語が話せる人もたくさんいます。また日本語が全く分からない人でも、リモデル、コントラクターなど外来語の単語やジェスチャーで話の内容が分かってしまうこともありますので、要注意です。