最近よく聞くのがショートセールと言う言葉。住宅物件をお探しの人は特に良く耳にすると思います。ここではショートセールとは何かを出来るだけ簡単に説明してみましょう。

 ショートセールとは、「不動産物件の持ち主が物件をローン総額よりも安く売って、その売り上げをローン会社にすべて渡すかわりのローン残高をすべて支払ったことにしてもらう」という取引のことです。

 不動産価格が下がった結果、多くのオーナーは物件の現在価格よりも多額のローンを抱えています。こういう状況で「リストラされる」「家族の誰かが病気になる」などの事態に遭遇し、毎月のローンの返済がままならなくなると、大変困ったことになってしまいます。不動産価値暴落以前、不動産価格がローン総額を上回っている状態なら、家を売ってローンを全額返済してもおつりが来るので問題なかったのですが、現状では家を売ってもローンを全額返せません。

 そこで登場するのがショートセール。銀行に交渉して「家を現在のマーケット価格で売ってそのお金を全部あげるから、それでローン返済は終わったことにしてほしい」と交渉するのです。ローン会社としては「ローン残高-不動産現状価格」が回収できず大損になってしまうわけですが、多くの会社はなんとこのような交渉に応じます!それはなぜかというと、毎月のローン返済ができない人に「金を返せ」といくらいい続けても、無い物は出せません。最終手段は抵当として家を取り上げるしかないのですが、それをやっても結局は現状の不動産価格分しか手に入らない。しかも会社側は取り上げた不動産を自分で売らなければならず、それにかかる手間や時間が大変です。そんなことをするくらいなら、オーナーに売ってもらってローンの残高をチャラにした方が楽だし得、ということになるのです。

 ただし銀行としても、本当はローンの返済能力がある人にショートセールを認めてしまっては損なので、その人が本当にローンを返せないのかどうか審査します。多くの場合、利子を負けてあげたり、返済期間を延ばしてみたりして、なんとかローンを返済させようとします。そんな風にいろいろやってみても「どうしても無理、この人はローンが返せん」という場合がショートセールになるわけです。

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 家を探している人がここで気をつけなければならないのは、MLSなどに「ショートセール」として掲載されている物件は、上記のような交渉がまだ終わっていないどころか、始まってすらいない!! ということです。銀行とのショートセールの交渉は「この金額で喜んで買ってくれるバイヤーがいる」ということが分かって初めてスタートします。ということなので、ショートセールに対してオファーを出してそれにオーナーがサインしてくれても、それで物件を買える保障ができたわけでは全然ありません。そこから初めてオーナーと銀行との交渉が始まるので、結果がどうなるかはオファーが通った時点ではまだ分からないのです。しかもこの交渉には1-3ヶ月、ひどいときには1年以上かかってしまいます。(時間節約のためには通りそうなショートセールと駄目そうなショートセールを事前にある度見分けることが大切です。)

 

さらに事態を混乱させているのは、エージェントの中に「とにかく銀行との交渉を早くスタートさせよう」としてショートセール物件を破格の安値でリストする人がかなりたくさんいる、ということです。安く出せばすぐに買い手が見つかります。かれらは早く買い手を見つけ、ショートセールの書類一式をローン会社に送りつけ、一刻も早く何ヶ月もかかるかもしれないプロセスをスタートさせようとするわけです。その場合、仮にショートセールをすることはOKになっても、そんな破格の安値がローン会社に認められるわけがありません。しばらくするとローン会社は自分で雇っているブローカーに頼んで正しい値段(BPOと呼ばれます)をつけてきます。破格の値段だからといって応じた初めのバイヤーはローン会社のつけた正しい価格を見てびっくり仰天。買うのをやめてしまうことも多いのですが、リスティングエージェントとしてはそんなことはとうに計算済み。そこで新たに「アプルーブド(Approved 認められた)ショートセール」として物件をMLSにリストし、初めて本気で買い手を捜し始めるわけです。ということなので、ショートセールの激安物件があったら「これは本当の価格ではない」と思った方が無難。単に安いからではなく、「もしも値段が普通でも自分は買う気があるだろうか」を考えた方がいいと思います。

 

アプルーブド・ショートセールを買うのにかかる時間はほぼ「普通」の物件と同じ考えていただいていいと思いますが、一般ショートセールに初めから付き合うのは大変です。とはいえローン会社がつけてくる価格も通常セールものに比べれば割安なことも多く、特に物件を買うのを急いでいない人、予算が非常にタイトな人はショートセールを探してみるのもいいかもしれません。ショートセール物件を買うには、ここに書いた他にもいろいろと知っておくべきことがありますので、詳しくはお電話等でユカリ・トラヴィスまでお気軽にご相談ください。