不動産契約書の読み方(ページ2)

 ここではカリフォルニア州で1から4戸建てまでの不動産売買契約に使用されるスタンダードな契約書、RPA-CA(California Residential Purchase Agreement and Joint Escrow Instruction)の2ページ目に何が書いてあるのかを説明したいと思います。(出来るだけ短時間で最後の8ページ目まで説明するように努力しますね!)

 3. Financial Terms 続き

 

: Verification of Down Payment and Closing Costs 頭金とクロージングコストがちゃんと支払えるという証明。どのボックスもチェックしないと「オファーがアクセプトされてから7日以内に提出する」となりますが、それではオファーが通りにくくなってしまいます。オファーに証明(銀行口座のステートメントなど)を添付するのが一般的です。

 銀行口座のステートメントは30日以内に発行された最新のもので、頭金ぎりぎりではなくクロージングコスト(ローンを借りる場合は購入金額の約3%あれば普通はOK)もちゃんと支払えることが証明できなくてはなりません。インターネットの画面のプリントアウトだと、口座を持っている人の名前が無かったりするので、毎月郵送されてくるステートメントのコピーの方がいいと思います。

株、定期預金、債券などのすぐに引き下ろし出来ない資産は、厳密に言うと頭金があるという証明にはなりません。

 : Loan Terms 
(1)   Loan Applications  何もボックスをチェックしないと「オファーがアクセプトされてから7日以内にローンの申し込みをする」となりますが、それでは普通は通用しません。オファーと一緒にローン会社から発行される発行されるPre-Approval Letterを提出するのが一般的です。Pre-Qualify ではなく、Pre-Approvalレターが必要ですので、お間違いなく。Pre-Approval Letterは、家探しを本格的に始める前に用意しておきましょう。

 (2)   Loan Contingency  ここには「バイヤーがまじめに努力してローン組もうとしている限りにおいては、ローンを組めるかどうかがこの契約のコンティンジェンシーとして認められる」と書かれています。つまりローンが万が一組めなかった場合は、コンティンジェンシー期間内なら契約をキャンセルしても契約違反にはならない(“頭金-経費”を返してもらえる)ということです。ただここで気をつけていただきたいのは、「頭金やクロージングコストのお金を使い込んでしまった」というのはコンティンジェンシーにはならないということです。ローンがちゃんと組めたのに頭金やクロージングコストが支払えないと契約違反になってしまうのでご注意ください。

(3)   Loan Contingency Removal  上記の「ローンコンティンジェンシー」を使って契約を解除できる期間をここに書きこみます。通常は17日間ですが、この期間はローンが組めるかどうか判断する期間としてはぎりぎりです。ただし期間をもっと長くしたり、「お金が実際にローン会社から振り込まれるまでずっとコンティンジェンシー期間です」などにしてしまうと、セラーに「へえ、この人ローンが組めるかどうかそんなに心配なんだ。」と思われてしまい、オファーが弱くなってしまいます。どうしたらいいか、考えどころですね。

(4)   No Loan Contingency  ローンを組まない人=全額キャッシュで支払う人はここの□をチェックします。

 

Appraisal Contingency 
 購入する家の査定(Appraisal)もコンティンジェンシーの一つです。もしも査定の結果、家の価格が契約価格よりも低かったら、それを理由に契約を解除しても契約違反になりません。ただしis NOTの□をチェックしてしまうと、査定はコンティンジェンシーになりません。

  All Cash Offer 
 全額をキャッシュで支払うときはこの□をチェックします。その場合は、オファー金額+クロージングコストがあることの証明をオファーに添付するのが普通です。

 K ここでは「バイヤーがここに記入された以外の方法でお金を調達しようとしてもセラーはそれに協力する義務は無い」と書かれています。たとえば「オファーでは普通のローンを借りると書かれていたが、バイヤーの都合でFHAローンに切り替えてしまい、ローンを通すために家の修理が必要になった。おまけにエスクロー期間も延長が必要になった」などという場合、セラーはそれに協力する義務はありません。

 

4.Allocation of Costs

 ここでは誰が何を負担するかを決めます。

 A.調査:シロアリ調査、公共下水に接続していない場合のセプティックタンク(いわゆる“汲み取り式”の現代版ですね。こういう建物は意外にたくさんあります)などの調査、井戸調査、NHDレポート(自然災害などの起こりやすさに関するレポート)などについて、誰が負担するかを決めます。

 B.自治体や政府の出す最低条件やレトロフィット要綱:カリフォルニア州や自治体は、不動産が売買される時に最低限満たされていなければならない建物の基準を定めています。火災報知機の設置、湯沸かし器が倒れないように固定されていることなどがそれで、細かい点は自治体によって異なります。このような修理はセラー負担で行うのが普通ですが、バイヤーが負担することもあります。

 

C。Escrow & Title  カリフォルニアではエスクロー費用はセラーとバイヤーが各自自分の分を負担。タイトル保険についてはオーナーを受取人とした保険についてはセラーが負担、ローン会社を受取人とした保険の分はバイヤーが負担するのが普通です。

 D.その他の費用
ロサンゼルス付近では不動産売買にかかる税金やHOA(ホームオーナーズアソシエーション)関連の費用は通常はセラーが負担するのが普通です。

 (1) County Transfer Tax:ロサンゼルスカウンティでは$1000対して$1.10

(2) City Transfer Tax:ロサンゼルス市では$1000に対して $4.50

(3) HOA Transfer Fee:金額はHOAによって異なります。

(4)  HOA Document Preparation Fee   HOAの規約や会議録などの書類は膨大なのでそれをコピーして準備する費用がかかります。金額はHOAによって異なります。

(5)  Private Transfer Fee:土地を開発したデベロッパーなどが、将来的にそこにある不動産が売り買いされるたびに1%などの料金を徴収するもの。ロサンゼルス付近は古い住宅地が多いので、このような料金が徴収されることは稀です。

(6)  Home Warranty: 建物に付随する機械的なもの(冷暖房施設、ダクト、配管、湯沸かし器、皿洗い機など)が壊れた場合、僅かな一定料金で修理してくれるという保険。保険料(カバーする内容によりますが、1年分$350400程度)はセラーが支払うのが一般的です。ちなみにこの保険では屋根や基礎などの構造的な欠陥はカバーされません。

 以上が2ページ目の内容です。

 次回は3ページ目をご説明します。

 なお、このコラムの目的は契約書のおおまかな内容を一般的読み物としてできるだけ楽しく概説するもので、契約書内容を正確に解説・解釈するものではありません。実際に不動産契約書を提出したり、受け取った場合は、ご自分の不動産エージェントからきちんと個別の状況に即した説明を受けてください。資格のあるエージェントの助け無しにこのコラムから得た情報によって契約書を解釈したり、自分で契約書を作成することは絶対にお勧めできません。またその場合に生じた損害等については一切責任を負いません。