不動産バブル崩壊
私がロサンゼルスに引っ越してきたのは1994年。その後、行ったり来たりは多少あったものの、それ以降の生活はアメリカがベースになっています。当時、日本はバブル崩壊直後で経済情勢は日々激しくなりつつあり、私が勤めていた住宅都市整備公団(ニュータウン開発を担当していました)も民営化が始まるところでした。
日本に比べれば景気のいいアメリカに越してきたつもりだったのに、10年ちょっとでなんとアメリカでもバブル崩壊。リーマンショックとい言われますが、大不況の本当の理由は日本と同じ不動産バブル。にもかかわらず!!私はバブル崩壊がこれほど大きく来るのを予測できませんでした・・・。アメリカの大多数の人と同じように「アメリカは大丈夫、日本とは違う」「アメリカには世界の富が集まってくる」と思っていた・・・というか、疑うきっかけがなかったんですね。今から考えると何を考えていたんだか。なんとなーく危ない気はしていたものの、「今がピーク、今すぐ家を売ろう」とかいう決断をするまでの確信は全くなく、「しばらくしたらこんなには上がらなくなるだろうな」ぐらいに思っていたんですね。
以下のチャートで見ていただく通り、カリフォルニアでも2007年夏から2009年冬までの不動産の下げは半端ではありません。しかも株価も崩壊。ノイローゼや不眠症になった人も多いと聞きます。
Source: DataQuick
アメリカ不動産価格の推移
ちなみに以下はRobert Shillerという経済学者がつくった、あまりにも有名なアメリカの住宅価格推移グラフです。1890年を100としてアメリカ住宅売買の圧倒的主流である中古住宅価格の推移を示しています。重要なのは“このグラフではインフレ率を考慮してある”ということで、もしもグラフが完全に横一直線だったら、住宅価格はインフレ率で上昇してきたということになります。
もしグラフが常に横一直線だったらそんなにすばらしいことはありません!
これでみると第二次世界大戦後から2000年ぐらいまでは凸凹はあるものの大体横一直線に近く、「インフレ率と同じに価値が上昇し、何百年経っても消滅しない投資など土地以外に考えられない」「なんて安全ですばらしい投資なんだ」「しかも自分の家なら管理も簡単だ」と思われていたわけです。
それが変わったのが2000年頃。実は私の家族が自宅を買ったのが2000年だったのですが、そこからの急上昇は不動産をまるで株か何かのように投機的に見る、大量の人たちを生み出してしまいました。不動産にインフレ率以上の上昇を期待するだけでなく、そういう風に上昇してくれないと破綻するようなローンの借り方をする人が、出現してしまったのです。
(グラフをダブルクリックすると大きくなります。このグラフはインターネット上に多数掲載されています。)
ちなみに以下はカリフォルニアの失業率のグラフです。これでみると、これまでは地価は失業率に連動して上がり下がりしていたのに、2003年付近の失業率の上昇は全然地価上昇に影響を与えていないことが分かります。それほど今回の上昇は例外的な訳ですね。
(グラフをダブルクリックすると大きくなります。)
これからはどうなるのでしょうか?
先のグラフを作ったShillerさんの予測は、当然ながら家の価格はいつかはベースラインの指標110ぐらいに戻るというもので、現在140ぐらいになっている価格はまだ下がると言っています。
ただし、勢いの良い下げが一度現在価格で止まっていることは確かで、指標140付近で今後平らになってしまうことも、もちろん考えられます。アメリカ国民は全員一度家の価格が指標200を超えるのを見てしまったわけで、そういう経験をした後に、「ネバーマインド! 家の価格はやっぱり100なのが普通」と、これまた全員が思い直せるでしょうか?
買い手はともかく、売り手の方はなかなかそうは思えないと思います。それは私たちエージェントが家をリスティングする時、オーナーの方に値段を下げてもらうのが今ものすごく難しい状態なことからも実感できます。買い手が「100が普通。そこまで戻るまで本当は買いたくないな」と思っているとしても、売り手の方は「本来は200が普通。そこに戻るまでは売りたくない!」と思っています。そして、その中間の150付近で止まった・・・というのはなんか分かる気がしません?
2007年のバブル崩壊を予測できなかった私に将来予測ができるはずはありませんが、私は現状価格でフラットのまま(つまりインフレ率相当で上昇)なのではないか、と思います。最悪ケースでも、小さな上下を繰り返しているうちに高めのインフレが来て、インフレと上げ幅の差で指標110付近に戻るのでは、と思いますが、どうでしょうか?
いづれにしても、今後びっくりするような動きはあまりないのでないでしょうか。(私の予想はまたはずれかもしれませんが)今、家が必要なら買った方がいいと思います。万が一Shiller さんが正しくて、指標110とか120まで不動産価値がいつかは戻るとしても(そうなるかどうかはわかりません)、それまで待っていたらすごい時間がかかってしまうのではないでしょうか。そうなると現在の超超低金利も利用できませんし、子供の学校も安定しませんし、その間の家賃支払いも無駄になります。
「インフレ率相当で上昇する投資」としての不動産投資の価値は長期的には変わっていないと思いますし、家を持つということには、住処の保障、自分で自分の住む空間を好きなようにコントロールできる、という投資以上の大切な意味があることも忘れていただきなくないと思います。
皆さんはどう思いますか? コメントをお待ちしています。
ちなみに2000年から2012年まではインフレ率だけで物の価格は30%ぐらい上昇しています。10年前に買った株が3割上がっても、全然喜べないわけですね。日本の普通預金にある預金はたぶんゼロ金利に近いので3割目減りしたことになります!!!
(インフレ率について、詳しくはこのサイトのインフレ計算機をご利用くださいhttp://www.usinflationcalculator.com/)
この記事を書いた後、以下のサイトで住宅統計についてのブログを読みました。私の記事中にShillerの有名な住宅価格推移グラフを載せましたが、Shillerさんが自分でグラフを書いたのは2006年までで、その後はSteve Barryなど別の人がグラフを書き足しています。ところがその書き足し方に間違いがあり、使うべき統計を使っていないことと、もっと大きいのは2006年以降の数字はインフレ率で調整していないそうです。(2006年までは調整しています。)となると、2006年以降の住宅上昇カーブはもっと低く、現在時点のインフレ率調整後はもっと低いということになります。そうだとすると、住宅価格は下がりきった時点による近くなるわけです。
この議論が正しいかどうか、議論が分かれるところですが。。。
詳しくは以下をご覧ください。
http://blog.jparsons.net/2011/04/housing-bubble-graph-fail.html