これだ!という物件が見つかったら、バイヤーは何をしたらいいのでしょうか?そうです。オファーを出さなければなりません。でもオファーとは何でしょうか? 下の1-3から正解を選んでください。(カリフォルニアの住宅物件の場合)
1)「この額なら買います」という金額提示
2) 金額はさておき、買う意思があるという意思表示
3) バイヤーがサインした売買契約書
正解は(3)。(1)だと思っている人が結構多いのですが、オファーというのは実はバイヤーだけがサインした契約書のことなのです。もちろんその中に金額も書いてあるのですが、それをセラーに渡して「こういう条件ですが、サインしてくれますか?」と持ちかけるのです。
ですので、「まだ家を見ているだけだから、契約書なんか分からなくてもいいや」とのんびりしているわけにはいきません。もしも明日気に入った家が出現したら、すぐに契約書(=オファー)にサインしなければならない(!)ので、家探しをしながら、契約書にも徐々に目を通しておくことをお勧めします。もちろん契約書はバイヤー側のエージェントが作成しますが、エージェントと相談しながら自分で変えられる条件がいろいろとあります。サインする前に、自分はどういう条件をセラーに出しているのかが分かっている必要があります。
逆に、自分がセラーで今自分の家を売り出しているとしましょう。MLSにリスティング情報が載った直後に、このような契約書(=オファー)がリスティングエージェントのところにメールされてくる可能性があります。セラー側もバイヤーがどういう条件で家を買おうとしているのか、契約書を読んできちんと分かっている必要があります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここではカリフォルニア州で1から4戸建てまでの不動産売買契約に使用されるスタンダードな契約書、RPA-CA(California Residential Purchase Agreement and Joint Escrow Instruction)の一ページ目に何が書いてあるのかを説明したいと思います。(出来るだけ短時間で最後の8ページ目まで説明するように努力しますね!)
項目1.オファー
A.ここにはバイヤーの姓名を書きます。自分だけがバイヤーなのか、妻や夫もバイヤーなのか、頭金を出してくれる親はどうなるのか、考えてみましょう。
B.ここはオファーを出す物件の住所などです。Assessor’s Parcel No とは、不動産に税務署が付けた番号のことです。
C.ここにはオファー金額を書き込みます。
D.Close of Escrow:ここにはエスクロー期間を何日間にするのかを書き込みます。何月何日と日付を書き込むことも出来ますが、通常は30日間などの期間を記入します。オファーを出しても相手がいつサインして返してくれるかわからないので、期間を書いた方が簡単だからです。でも引越し予定が決まっている場合などは、日付を書いた方がいいかもしれません。
エスクロー中、最も時間がかかるのがローン。まずローンの審査が始まってからローンのお金が振り込まれるまでだいたい何日間かかるかをローン担当者に聞きいて調べましょう。スタンダードは30日ですが、ローンの種類によっては45日以上かかることもあります。
項目2.エージェンシー
A.ここには“不動産エージェントとバイヤーやセラーの関係を説明した別の書類 (ADと呼ばれます)を既に受け取ったことを確認します”と書いてあります。ADもオファーと一緒に提出しなくてはなりません。
B.ここには“バイヤーの場合は現在使っている不動産エージェントがこの物件を買おうとしてる別のバイヤーにも雇われているかもしれない、セラーの場合は今使っている不動産エージェントが競争相手になる似たような物件をリスティングしているかもしれない、ということが書かれた書類(DA)を既に受け取りました”と書いてあります。DAはセラーには関係ないのでオファーと一緒に出す必要はありませんが、本来はオファーを書く前に読んで、サインをしておくべきです。
自分のエージェント個人がが別の競争相手の別のバイヤーやセラーにも同時に雇われているということはごく稀にしかないと思いますが、そのエージェントが所属している会社に所属する別のエージェントが競争相手に雇われているということは十分ありうると思います。
項目3 ファイナンシャルターム
A.イニシャルデポジット:ここにはオファーがアクセプトされたらエスクロー会社にバイヤーが支払うデポジット額を記入します。いくつかオプションの□がありますが、これをどれもチェックしないスタンダードな場合は、オファーがアクセプトされたらバイヤーが3日以内にエスクロー会社にチェックを持っていくことになります。銀行振込みにしたり、チェックをあらかじめ書いてバイヤー側のエージェントに預かってもらっておくことも出来ます。デポジットの金額は通常は購入金額の3%になります。価格が非常に安い物件などでは10%を要求されることもあります。
B.デポジットの増額:オファーがアクセプトされてから一定期間内にデポジット額を増額する場合に記入しますが、このような増額は稀にしか行われません。
C.ローン
(1)ファーストローン:ここには住宅購入ローンで調達する金額を記入します。ローンの種類がFHA、VAの場合は該当する□をチェック、セラーがバイヤー向けにローンを組んでくれる場合(最近はめったにありません)には、その該当ボックスをチェックします。
(2)セカンドローン:ローンを二つ借りる場合は、ここに1と同様に記入しますが、最近はローンを二つ借りるケースはあまりないと思います。
(3)ここには“FHAやVAローンを借りるバイヤーは○日以内にローン会社が要求する修理内容や、その他セラーにやって欲しいと思っている修理内容やそのコストを知らせなければならない“と書かれています。スタンダードは17日間です。
政府がバックアップしているFHAやVAローンには、優良な住宅ストックを増進するという使命があり、基準に合わない住宅には貸し出してもらえません。ですので、物件に問題が見つかると、その問題を直すまでローンがおりないことになります。そこで「そういうことはちゃんと早めにセラーに言ってくださいよ」という意味で作られたのがこの項目なのです。ただしセラーには要求に従って修理をしたり、そのコストを負担する義務はありません。
D.その他のファイナンシャルターム
A~Cに該当しないその他の金銭関係の条件を記入します。セラーにクロージングコストを支払ってもらいたい場合は、ここにその金額を記入します。
E.エスクローがクローズする時にバイヤーが振り込む金額を記入します。この金額とAのデポジットを合計した額が頭金(=ダウンペイメント)になります。
F 購入金額。A~Eまでの合計になっているはずです。
以上が一ページ目の内容です。
次回は2ページ目をご説明します。
なお、このコラムの目的は契約書のおおまかな内容を一般的読み物としてできるだけ楽しく概説するもので、契約書内容を正確に解説・解釈するものではありません。実際に不動産契約書を提出したり、受け取った場合は、ご自分の不動産エージェントからきちんと個別の状況に即した説明を受けてください。資格のあるエージェントの助け無しにこのコラムから得た情報によって契約書を解釈したり、自分で契約書を作成することは絶対にお勧めできません。またその場合に生じた損害等については一切責任を負いません。